困難な状況を切り拓くリーダー行動の調査と考察(2)

■はじめに

私ども「株式会社トレイク」では、職場リーダーを対象に、困難な状況を切り拓くトレーニング型の研修を実施しています。
http://traic.co.jp/aboutus/

このたび、困難な状況におけるリーダー行動に関する簡易調査を行いましたので、結果と考察を3回シリーズで紹介いたします。

※第1回はこちらからご覧ください。

■ひとの個性は複雑

「ソーシャルスタイル理論」(デービット・メリル&ロジャー・リード1968)は、ひとのスタイルを4つに分類しタイプごとの適応行動を示唆したものです。血液型診断で親しみのある私たちにとって直観的に受けいれやすい理論です。(血液型診断より信憑性は高いでしょうし…)

しかし、ひとのスタイルを4つで表すことには少し無理があります。スタイルを形づくる構成要素も数多ありますし、要素間の相互作用は状況に応じて複雑化します。

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■チームを4つのタイプに分類する

人間のスタイルでさえ複雑なのに、チームのスタイルとなるともっと複雑です。

複数のメンバーの複数のスタイルが掛け算となって肥大化します。一人ひとりの思考パターンや行動パターンまで掛け算に入れると、チームをタイプ別に分類するなんて雲をつかむような話です。

それでも、迷える職場リーダーにとって困難な状況を切り拓く手がかりになれば…という思いから、あえてチームを4つのタイプに単純化して、タイプ別の最適なリーダー行動を探ることにしました。

そのためには、まずチームのタイプを4つに分類します。

(1)ゆめみる・まずやる「ワイガヤ型チーム」

動きや意思決定が能動的で、人間への関心が高い

(2)どうぞ・いいね「寄りあい型チーム」

動きや意思決定が受動的で、人間への関心が高い

(3)なにやる・できたか「目的達成型チーム」

動きや意思決定が能動的で、課題への関心が高い

(4)どうやる・むりなく「安全確実型チーム」

動きや意思決定が受動的で、課題への関心が高い

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■チームタイプ別の活動結果

いよいよ調査結果の紹介です。

チーム成果(目標達成度、組織活性度、組織成長度)について、タイプ別に比較します。

全タイプを紹介することは字数制限の都合から難しいため、特徴が逆のため比較しやすい、「(2)寄りあい型チーム」と「(3)目的達成型チーム」をとりあげて、平均点(4点満点)を算出します。

<目標達成度>

・寄りあい型チーム:3.23点
・目標達成型チーム:3.56点

<組織活性度>

・寄りあい型チーム:3.38点
・目標達成型チーム:3.38点

<組織成長度>

・寄りあい型チーム:3.54点
・目標達成型チーム:3.46点

ご覧のとおり、目標達成度は(文字どおり)目標達成型チームが0.33点高く組織活性度は同点組織成長度は寄りあい型チームが0.08点高くなっています。

■チームタイプ別のリーダー行動

続いて、リーダー行動の平均点(出現度)の高低について、寄りあい型チームと目標達成型チームそれぞれみてみます。

<平均点が高いリーダー行動>

・寄りあい型チーム

*応援体制(3.92点)
*成果物のコンセプト(3.85点)
*成果物の目標設定(3.85点)
*完遂(3.85点)
*リーダーの役割認識(3.77点)
*指示命令(3.77点)

・目標達成型チーム

*チームリーダー(4.00点)
*リーダーの役割認識(3.94点)
*コミュニケーション・ルート(3.94点)
*指示命令(3.94点)
*完遂(3.94点)
*組織の課題、目標(3.93点)

<平均点が低いリーダー行動>

・寄りあい型チーム

*チームの方針(2.46点)
*ストレッチ目標(2.58点)
*組織の学習(3.00点)
*組織のコア・バリュー(3.08点)
*成果物の工数計画(3.08点)
*評価(3.08点)
*改善(3.08点)

・目標達成型チーム

*ストレッチ目標(3.13点)
*組織の学習(3.25点)
*組織のビジョン(3.31点)
*成果物の資源計画(3.44点)
*人員配置(3.44点)
*進捗管理(3.44点)
*評価(3.44点)

平均点が高いリーダー行動をみると、寄りあい型チームは、「応援体制」など人的資源の活用が見られます。一方、目標達成型チームは、「チームリーダー」の存在し、リーダー自身の「役割認識」、「コミュニケーション・ルート」「指示・命令」といった仕組みづくりが見られます。

平均点が低いリーダー行動をみると、寄りあい型チーム・目標達成型チームともに、「ストレッチ目標」と「組織の学習」「評価」などが見られます。これは、ワークをこなす(Do)ことに精一杯で、成果とプロセスの評価、ノウハウの蓄積、次なる目標(Check&Action、Next Pan)まで意識がまわらないことの裏付けです。これは、どのタイプのチームでも現れることを心する必要があります。(事実、成長感を味わえない職場は数多くあります。)

■タイプ別・チーム成果とリーダー行動の相関

最後に、チームタイプ別に、チーム成果(目標達成度、組織活性度、組織成長度)に強い影響を与えるリーダー行動は何かを探ります。

<寄りあい方型チーム>

  • 目標達成度……「成果物のコンセプト」「完遂」
  • 組織活性度……「配慮」「動機づけ」
  • 組織成長度……「チームリーダー(の明確な存在)」

<目標達成型チーム>

  • ほぼ無相関

これは小さな驚きです。

目標達成型チームの方が相関があると思っていたので、無相関に近い状態とは意外でした。

そういえば、ワークを観察すると、目標達成型チームの場合、強いリーダーシップを発揮する方が現れる傾向があります。(実際に前述したとおり、チームリーダーの明確な存在とリーダー自身の役割認識の平均点が高めでした。)

強いリーダーにつられたメンバーは成果を出しても成功要因を自覚できない傾向があります。(依存状態やフリーライダーが生じやすいのかもしれません。)これが無相関の引き金になったのでしょうか。

ただ、これはあくまでも推測。標本数が少ないため、さらに調査を重ねる必要がありますね。

■次回は…

リーダー行動の要素(42項目)間に相関がみられるものがありますので、これを解析することで、どのようなリーダー行動をとればチーム成果につながるのかを経路(パス)で考えてみたいと思います。

そして、結論として、「困難な状況においては、どのようなリーダー行動をとるのがふさわしいか」を独自に考察していく予定です。

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斎田真一(かえる先生)

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