■メゾ理論とリーダーシップの学習
約15年ほど前のことです。
私が大学の授業で「リーダーシップ」を初めて教える機会をいただいたとき、次の考えに出会いました。
「組織行動」は組織内の個人レベルに分析の焦点を置くので、組織に対するミクロ的なアプローチである。組織行動はモチベーションとか、リーダーシップ・スタイル、性格といった概念を研究するものであり、組織内の人間同士の認知や感情的な違いに関わるものである。
一方、「組織理論」は組織全体を一つの単位として分析するので、マクロ的な組織の研究である。組織理論は部門や組織にまとめられた人々や、そのレベルでの構造や行動の違いに関心を向ける。組織理論は組織の社会学であり、組織行動は組織の心理学である。
しかし、組織の研究に取り組む新しいアプローチが現れている。それはメゾ理論と呼ばれるものである。
多くの組織の研究やマネジメントの授業科目は組織行動か組織理論のどちらかを専門に扱う。しかしメゾ理論(メゾとは「~の中間」という意味)はミクロ・レベルとマクロ・レベルの分析を統合したものにかかわる。
個人やグループは組織に影響を与え、逆に、組織は個人とグループに影響を与える。組織で成功するためには、マネージャーも従業員も複数のレベルのことを同時に理解しておく必要がある。
『組織の経営学』 リチャード L ダフト(Richard L. Daft)2002年
なるほど…。
リーダーシップを学んでもらうにあたり、どこに焦点を当てるかは大きなテーマです。たとえば、次の焦点またはアプローチが考えられます。
- リーダーの資質や行動に焦点を当てる
- リーダーとフォローの関係性に焦点を当てる
- リーダーとフォローを含む組織(組織構造、仕事の仕組み、組織文化など)から出発し、上記2→1へとアプローチする
せっかく学術的に学んでもらうなら、上記のいずれかに絞るのではなく、いずれにも適応した「メゾ理論」を基本に授業を展開したほうがよいのでは?と思いつつも、メゾ理論は範囲が広すぎて学生が混乱するのでは?というジレンマもありました。
■メゾ理論を体験的に学ぶ企業研修プログラム
ならば試してみようということになり、授業計画を詳細に立案する前に、学生約80名を一つの組織の構成員にし、「リーダーシップに関するノウハウ集をつくる」というテーマを与え、2日間(約14時間)かけて行う壮大なワークを行いました。
ワークは大変なことの連続です。そもそも4~6名のグループワークでも意見を取りまとめたり協働したりするのが難しいのに、80名となると完全にカオスです。様子見で誰も発言しない、仕方なく登場したリーダーが場を仕切れない、発言が一部に偏り発言できないメンバーに不満が蓄積する、ついにはフリーライダー状態(ワークに参加しているだけ)が登場する事態になりました。
ところが、ワーク後に学生から感想を聞くと、面白い声が集まりました。
・リーダーの人間性が備わっていないと人動かせない(資質論的)
・リーダーがいつ・どのような行動をとるかが大切(行動論的)
・フォロワーがリーダーを信頼しついていく現象こそがリーダーシップ(相互作用論的)
・フォロワーがリーダーを能動的にサポートすることが自律的なチーム(相互作用論的)
・リーダーが組織の使命・戦略を示し構造をつくることが出発点(組織論的)
・リーダーとフォロワーとの関係性のなかで組織文化がつくられる(組織論的)
・なんでこんな大変なワークさせたの!?(笑)
なるほど…。
私が想像する以上に、学生の皆さんはこのワークを通じて「メゾ理論」を体験的に学んだようです。(大変なワークをさせてごめんなさい…)
これをヒントに生まれた企業研修のプログラムが、「職場リーダーのためのチームビルディング研修」です。
チームビルディング研修というと、様々なゲームやワークを通じて、チームのコミュニケーションや一体感を体感・醸成するものが一般的ですが、私のプログラムは「より職場らしく」「より仕事に近く」「より実践で使えるように」を目指しました。
<次回へつづく>