授業「リーダーシップの実践」を終えて

「リーダーシップの実践」を受講した皆さん、3日間の授業お疲れ様でした。

講義を聞く真剣な眼差し、記したノートに施された工夫、 難しいワークを全員でやり遂げる姿に感動しました。皆さんの今後の活躍が楽しみです。

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■印象深かったのはワーク

この授業では主に次のことを学習しました。

  • マネジメントとリーダーシップ
  • リーダーシップとは
  • リーダーシップの開発方法
  • 能動的フォロワーシップとは
  • リーダーとフォロワーとの相互作用(システムの見地から)
  • リーダーシップの理論
  • ビジネスパーソンや人間の成長とリーダーシップ
  • 以上をトレーニングする2種類の総合ワーク(2日目、3日目)

皆さんからは「体験型のワークが印象深い」といった声が圧倒的でした。

ワークの狙いは次のとおりです。

  • 人と人との知的な相互作用によりチームを機能させる
  • リーダーシップと能動的フォロワーシップを発揮する
  • 課題志向と人間志向のHi-Hi型を目指す
  • 変革のリーダーシップを発揮して困難な状況を切り拓く
  • ワークによる内省的実践でリーダーシップの持論を磨く
  • アイデンティティーを確立し、リーダーシップを成長させる

ワークの進め方は大まかに次のとおり。

  • 年代やバックボーン、価値観の違いを「受容」しながら
  • チーム全員で、的確に「状況を知り」
  • チームのミッションや成果物の「絵」(構想)を描き
  • 実現に向けた「道筋」を考え
  • 「人を巻き込ん」で組織と仕組みをつくり
  • 調整を図りながら粘り強く最後まで「やり遂げる」
■本当の意味で「受容」とは

ワークは主に2種類行いました。

  • 2日目:「ものづくりワーク」(1チームにつき5~6名)
  • 3日目:「価値創出ワーク」(1チームにつき21~22名)

ワーク開始段階で私が感じたことを紹介します。

まず、曖昧なテーマに驚いたり、フラットな立場のメンバーがチームを形成して成果を出すことに戸惑う人がたくさんいました。「どうして明確な指示を出してくれないのか」と怪訝な顔をする人もいたような…(笑)しかし、「自分たちで切り拓くしかない」と腹をくくったときの覚悟と責任、期待と不安が入り混じったときの表情は、人間味にあふれていました。

なんとなく対話が始まり、やがて成果物の構想が次々発案されるようになると、場の盛り上がりと一体感を覚えたことでしょう。

しかし、アイデアを選択する段階になると、雰囲気はガラリと変わりました。価値観と価値観がぶつかったり、譲ることに内心不満が生じたり、妥協の産物にテンションが下がりました。さきほどまでの一体感はどこへやら。虚無感に襲われるチームもありました。

この原因については、ワークの途中で私が解説しましたね。「われわれは何ものか」というチームのミッションを定めていないからです。そのため、判断の拠り所が無く、価値前提で意思決定しようとしても、心理的な満足が高まりません。(※チーム・ミッションについては後述)

また、他の問題も噴出しました。早い段階で何らかの役割を分担しすぎると、与えられた役割の範疇でしか考えなくなったり、フリーライダーがはびこります。ワーク後の振り返りで、「部分思考に陥る人が多かった」という反省があがりましたが、それは初期段階における過度の役割分担が原因です。(※役割分担については後述)

では、大人数で語り合えば良いのかというと、それも問題でした。たとえば、3日目のワークの冒頭では、20人強がフラットな状態で方向性を語り合いましたが、思いの強い人、ヒラメキのある人、声の大きい人しか発言できず、また、その人たちが言葉の意味合いを確認しあうキャッチボールに時間は費やされました。

ワークの振り返りでは、「発言できない人の不満が高い」という声がたくさんあがりました。ワークの途中でも解説しましたが、チーム活動の初期段階である場づくりにおいては、早く全員が発言できるよう「少人数での話し合いが有効」であることが理解できたと思います。

ただし、そのためには、最初に生まれたリーダー(生まれ方は、立候補・任命・自然発生など)が、「何時までに、何を語り合い、どのように共有・意見統一するのか」を予め決めておく、いわゆるアジェンダが大切だということも理解できたでしょう。

場づくりとは、課題志向と人間志向を調和させた高度なリーダーシップの発揮が必要です。多様なメンバー、異質な価値観を本当の意味で「受容」し、チーム活動を立ち上げるためには、人間配慮と課題形成との黄金バランスが求められるのです。

■チームのミッションと自分の存在意義を考える

ワークを終えて、皆さんが新鮮かつ重要だと感じたことは、「チームのミッションを考える大切さ」でした。(全体の9割前後)

少々乱暴な言い方ですが、仕事で組織に埋没した状態だと、チームの存在意義が見えず、自分への期待や自分が果たすべき貢献内容もわからず、あげく自分の存在意義を見失いがちです。

そこで、ワークでは、あえて高い視座からチームのミッションを考える体験を行いました。あわせて自分の存在意義を考えるきっかけにしました。

存在意義というと、私たちがよく発する「役割分担」という言葉を思い出します。

本来「役割」というものは、無機質に、機械的に振り分けられるものではありません。組織の中で個の存在が高まるほど、その人なりの仕事観・人生観を大切にしながら自覚的・能動的に存在意義を見いだし、「周囲から期待される役割」と「自分から自覚すべき役割」をつくりあげていくものだと思います。

そうした緩やかな協働体のなかで「役割」は育まれ、自然発生的に「分担」されていくのが理想かもしれませんね。オルフェウス室内管弦楽団の「オルフェウス・プロセス」ように。先輩になり、上司になり、父になり、母になり、PTA会長や町内会長になることで、その役割を演じ、演じることでその役割に”成る”ように。

■リーダー行動と組織づくりを皮膚感覚で

他に多かった感想は、「リーダー行動が組織づくりに与える影響を体験できた」ことです。(全体の8割前後)

公式組織論(Chester.I.Barnard)を解説しましたよね。組織は、「共通目的」を持ち、「協働意識」(貢献意欲)をもったメンバーが集まり、「コミュニケーション」(上意下達・下意上達)があることで成立する、という考えです。また、組織が存続する条件には、「有効性」(組織目的の達成度)と、「能率」(一人ひとりの動機の満足度)があるといわれています。

3日目のワークでは、20人を超えるメンバーがフラットな状態から始まり、ゆるやかに次の要素が築かれていったのを覚えていますか。

  • 「共通目的」(チームのミッション、成果物の構想)
  • 「協働意識」(皆さんのワークに対する高い参加意識)
  • 「コミュニケーション」(雑談や対話、指令系統、報告連絡相談ルート等)

皆さんは「公式組織」の基盤を、自分たちでつくりあげていったのです。

組織設計に着目すると、”描いた絵に適合した組織形態をつくる”大切さも体験できたことでしょう。「組織は戦略に従う」(Alfred DuPont Chandler、1962)に通じる考え方です。

ワークでは、「ライン組織」ができあがりました。たとえば、模造紙にPM理論を記述するチーム、事例を記述するチーム、表紙をつくるチーム、まとめを記述するチームなど。ライン組織の類型である「機能別組織」が出来上がりましたね。

続いて、各機能の調整を担うスタッフ・チームも登場しました。模造紙の書式を統一したり、統一基準をつくって内容をチェックして品質を担保したり、ボトルネック工程を把握して応援体制を整えたり。各機能を統合して、一貫性・統一性のある作品を生み出していました。

要するに、やること(機能)をチームごとに分化させる「ライン」と、各機能・各チームを統合する「スタッフ」という、「ライン&スタッフ組織」ができあがったのです。

「事業部制組織」「マトリックス組織」「SBU(戦略事業単位)」「ネットワーク組織」などの高度で複雑な組織までは至らないが、基本であるライン組織やライン&スタッフ組織が自然発生的にできあがりました。

リーダーシップの授業で組織戦略まで踏み込むのは、少し度を越したかもしれませんね。しかし、集団(単なる人の集まり)を有効に機能させて組織化させるためには、「リーダー行動」と「コミュニケーション」が強く影響していることを、皮膚感覚で感じたなら何よりです。

■リーダー行動と組織運用

3日目のクラスワーク(講師の私は参加者の自主性に委任した状態)が始まると、皆さん「どうすればいいのか」「誰がリーダーを務めるのか」「自分がリーダーになったらみんなついてきてくれるのか」、混迷と不安、疑心暗鬼がはびこります。

そのような状況要因においては、人間関係論にもとづく民主的で対人配慮の強い人間志向型のリーダー行動が出現しやすくなります。

しかし、それだけでは高業績につながりにくいことをワークで実感しましたね。科学的管理法および管理過程論にもとづく合理的かつ課題志向型のリーダー行動がとても重要であることが理解できたと思います。

具体的には、状況を知り、絵を描き、課題を形成し、組織を構築し、仕組みをつくる。手順計画、資源計画、工数計画を立案し、指示・命令のもとでチーム活動を実行させる。進捗管理や評価などの統制を行い、さまざまな調整を図りながら成果へたどり着くといった過程(プロセス)です。

ただし、こうした組織運用の中心はメンバーであることは言うまでもありません。つまり、管理過程論的で合理的な運用を行う課題志向型のリーダー行動(P)から高業績につなげたいならば、その中に人間関係論的で民主的・情緒的な運用を行う人間志向型のリーダー行動(M)がぎゅっと詰まっていなければならないのです。

「たまご」の「殻」を破って高業績を得るなら、課題志向(P)が「白身」、人間志向(M)が「黄身」の関係なのかもしれません。そして、「白身」と「黄身」だけでは、「たまご」だけでは価値ある料理がつくれないように、リーダーシップとコミュニケーションだけ強化しても、高業績には至らないことを理解しておくことも重要です。(※高業績のためには、戦略、目標管理、問題解決、指導育成、チーム活性化などのマネジメント・スキル、その他ビジネス・スキルの学習と実践も大切。)

■かえる先生から贈る言葉

最終試験を提出するときの表情は実に様々でした。

達成感あふれる表情
憔悴しきった表情
試験の出来が良くなくて言い訳したいという表情
字が下手で申し訳ないという表情

皆さんがどのような表情であっても、私が贈る言葉は同じ。

  • 「3日間よく頑張りましたね」
  • 「学び合いと分かち合いをありがとう」
  • 「これからの活躍を応援しています」

感じる点、学び得た点は、人それぞれだと思います。ただ全員にお願いしたいのは、テキストやレジュメを参考にしながら、できるだけ早いうちにリーダーシップに関する自分なりの持論を磨いてください。

そして、持論をもとに実践し、実践結果や自分の心理・行動を内省してください。最後には、自分なりのリーダーシップに関する持論をもっと豊かにしてください。

自分らしさのために。

職場のため、お客様のため、社会のために。

■皆さまの活躍を応援しています。
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株式会社トレイク(TRAIC.Ltd)

http://www.traic.co.jp

斎田真一(かえる先生)

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