授業「考える力をつける」を終えて

「考える力をつける」を受講した皆さん、3日間の授業お疲れ様でした。

最初は「難しいな~」と感じた方も多かったと思います。しかし、ゆっくり、じっくり学習を積み上げることで、「わかるかも…」「わかる!」「できるかも…」「できた!」と変わっていきましたね。私も皆さんと一緒に成長を感じることができて嬉しさいっぱいです。

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■この授業では主に次のことを学習しました。

  • 考える(思考)とは
  • 論理とは
  • 考える作業の本質(分解、比較、分類、因果)
  • 論理的階層構造(MECE、クライテリア、ディメンジョン)
  • 論理展開(演繹法、帰納法)
  • 演繹と帰納の組み合わせ
  • 合理的分析

復習を兼ねて授業で私が感じたことを紹介します。

■イシューを明確に

答えを出すために思考するにあたっては、まずイシュー(issue、問い)を明確にすることが大切です。

私は「ボ~っ」と考えるともなく考えるのが好きなのですが(笑)、きちんと結論を出すために思考を確実にめぐらすなら、その問いを明らかにすることから始めなくてはなりません。

具体的には、仕事を始める前に、「自分はこれから何の成果を出したいのか」「どのような状態になれば仕事が完成したといえるのか」を、数分でいいから考えてみるのはいかがでしょう。また、プライベートやキャリアにおいて重大な結論を下したとき、その結論は最初の問いに適合するのか確認してみてはどうでしょう。

■考察対象と知識のつき合わせで結論を導く

考えるにあたっては、「考察対象」を的確にとらえることが大切です。思い込みをなくして事象を素直に把握します。自分の感覚器官を高め、知覚を鋭くして、正しく意味づけます。

例えば、「試験では設問文を穴があくほどよく読むように」と解説しましたね。「お客様の要望を正確に把握する」「子供の言うことをその子が見えるように見てみる」ことも一例です。

「知識」や「経験」を豊富に持っていることも大切です。知識や経験が少ないと、(考察対象を的確にとらえることができても)価値ある結論を導くことができません。

考察対象と知識をつき合わせることで「結論」が導かれますが、その結論は属人的(人それぞれ)になりやすいでこともに注意が必要です。人それぞれであることは多様性と創造性の源泉ではありますが、誰が見ても聞いても確かさがある客観的妥当性を担保するものではありません。人に理解してもらうためには、ファクト(fact)とロジック(logic)が どうしても必要です。

こんな難しいことを言わなくても、授業では「しかく、やじるし、しかく」で解説しましたね(笑)ファクトとは、「しかく」(事象)が真であること。ロジックとは、「しかく、やじるし、しかく」(推論)に客観的妥当性があることです。

そして、このロジックを展開するための方法(論理展開方法)が、演繹法と帰納法です。

■演繹法

演繹法が純粋論理的であるためには、小前提(既呈命題)を大前提(一般命題)に照して必然的な結論を得る必要があります。

そのためには、次の3点が重要です。

  • 小前提が真であること
  • 大前提も真であること
  • 包含関係が正しいこと

包含関係については、オイラー図を何度も学習しました。最初は意味不明??だったかもしれませんが、 「大きい円、中くらいの円、小さい円」を何度も描くうちにだんだんわかってきましたと思います。結論が正しいためには、「小さい円」が「大きな円」に包まれている必要があります。「媒概念」(中くらいの円)も念頭に入れておくと尚良かったですね。

アリストテレスの「名辞」とスコラ学派の「命題」を使い分けると、言葉の混乱が少なくなることも実感したことでしょう。

余談ですが、ロジカルシンキングのツールである「ロジックツリー」をこの授業で学んだことを活用して解説したときに驚きの声があがったのが印象的でした。

考察対象(小前提)を上位概念(大前提)につき合わせて(比較)、類似点と相違点 にふりわける(分類)作業を繰り返すことで下位概念ができあがることを、洋服を収納する事例で解説したときです。

驚きの声があがるということは、考える作業の本質がわかり、演繹法の基本もわかっている証ではないでしょうか。皆さんはもう、ロジックツリーなどロジカルシンキングの便利ツールを紹介するHow-to本の域を超えています。ぜひ自信を持ってください。

■帰納法

帰納法では、観察事象の共通項のくくり方が難しかったようですね。理解を深めるために最初は、「おいしい」「美しい」「人気がある」などの述語を統一した事例を紹介しました。

用語が統一されていれば共通事項は簡単に見つかります。例えば、調査の世界では、言語の解釈が多義にならないよう選択肢の用語を予め設定することがあります。

それでも、非共通事項から共通事項を抽出する時はどうしても解釈が入り、曖昧さが漂うことを実感したと思います。その場合でも、「その抽出方法は正しいね」と思ってもらえるように、名辞と命題の感性を磨くことが肝要です。

他にも、帰納法における結論の正しさを高めるためには次の点が重要でした。

  • 観察事象が真である
  • 観察事象の標本数が一定以上ある
  • 標本にカタヨリがない

フランシス・ベーコン(Francis Bacon)およびその後の経験論者は、実証的な帰納法の有効性を主張しました。しかし、フランシス・ベーコン自らイドラ(idola、先入見)を唱えているように、神学から人間中心の学問に変遷したことで曖昧さがついてまわることを見抜いていたのでしょうね。

■演繹と帰納の組み合わせで

現実の世界に生きている以上、ほとんどの事象は演繹法だけで結論を導くことはできません。自然科学や社会科学を学ぶ皆さんなら、なおさらです。

様々なことを見て聞いて学んで経験する。 その積み重ねから、「要するにこういうことがいえるよね」と結論を出しています。帰納法によるアプローチが日常的に行われているのです。

そこで授業で強調したのは、「演繹と帰納の組み合わせ」でした。「演繹の大前提は帰納の結論によって証明される」という考えでしたね。

様々な知識・経験(観察事象)の共通事項から一般的に言えることを導いたら(帰納の結論)、それを自分なりの教訓、ポリシー、ルール、マニュアルにします(演繹の大前提)。 何らかの決断を下すべきことに遭遇したとき(小前提)、その教訓等に照らして結論を出します(演繹の結論)。

つまるところ、確かな決断を下すためには、豊かな知識・経験の蓄積こそ「大・大・大前提」といえるでしょう。 異質な物事を受けいれ、積極的に新しいことを経験し、多方面から新しい知識を得る努力が前提です。

また、教訓等をもとに実践して省察することで、それ自体が新しい知識・経験になり、さらに教訓が磨かれ、決断をいっそう確かなものにすることでしょう。

「考える力をつける」の学習を突きつめた結論はここにあると思います。ぜひたくさんのことを学び、気づき、蓄積してください。もっともっと自分を高め、職場やお客様に貢献できる素敵な人になったください。

そして、考えることに疲れたら、考えることをやめてゆっくり頭を休めてください。ただただ”感じる”ことを楽しんでください。

■皆さまの活躍を応援しています。
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斎田真一(かえる先生)

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