ケーススタディー「A社の事業戦略」

■はじめに

ケーススタディは、組織や職場の取り巻く状況を把握し、その問題を多角的に発見し、優先的に取り組む課題を形成して、解決策を立案する学習方法です。ケーススタディーにより、状況把握力・思考力・表現力などが高まり、そこから得られた教訓は実践に役立ちます。

かえる先生が作成したミニ・ケースで一緒に学びのトレーニングを行いましょう!

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ケース「A社の事業戦略」

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■状況設定文

A社は、国内の大手玩具メーカーで、直近の売上高は500億円である。

A社の商品企画力には定評がある。車や電車などを小さく・リアルに再現した玩具や、日本の文化や生活習慣を再現した玩具は、国内ならず海外からも高い評価を得ている。主力商品は、ミニカー、現代版ベーゴマ、お菓子が作れる玩具などである。

国内の玩具市場は、少子高齢化や不況の影響で縮小している。A社もそのあおりを受け、売上高がこの数年減少傾向にある。

一方、海外の玩具市場は、欧米や新興国が好調である。特に欧米市場では、市場の成熟がみられるものの、玩具が生活の中にとけ込み、贈答用としても利用されていることから、市場規模は世界最大である。

欧米では、世界的に有名な大手玩具メーカーが多数存在し、広告宣伝に巨額を投入し、価格支配力や棚獲得などで小売チェーンへの影響力を発揮している。

A社も、欧米に開発・生産拠点や販売ルートを持っている。しかし、欧米の大手玩具メーカーに比べ、事業の仕組みや知名度が違うため、このままでは欧米の事業拡大に限界がある。

違いとは、例えば、欧米の大手玩具メーカーは商品設計やサンプル作製を東南アジアの協力メーカーに任せることでコスト優位性を高めているが、A社はノウハウ流出を防ぐ観点から設計やサンプル作製は自社で手掛けている。また、A社は、欧米の大手玩具メーカーよりも欧米での実績や知名度が低いため、欧米の小売チェーンへの影響力も弱い。

そんな中、A社のメイン銀行から、アメリカの大手玩具メーカーB社を買収する話が持ちあがった。B社は、事業の仕組みが欧米式で、機関車などの玩具は欧米市場で実績や知名度が高く、欧米の大手小売チェーンに対する影響力も強い。

しかし、B社を買収するには、約680億円にあたる株式を買い付ける必要があり、A社の財務体質を悪化させる恐れがある。

■設問

<設問1>
事業戦略は、「だれに(貢献対象)、何の価値(貢献内容)を提供するか」という観点から大局的に検討することが基本である。日本市場と欧米市場に進出しているA社は、今後、どのような戦略をとるべきか。

<設問2>
戦略的な意思決定を行う際には、事前の情報収集・情報分析が大切である。設問1で意思決定をより的確に行うためには、どのような情報を収集・分析すべきか。欲しい情報を列挙したうえで、その優先付け(情報の重要度×収集・分析の緊急度)を行いなさい。

<設問3>
事業戦略を策定する際は、機能別戦略も考慮しなければならない。設問1で意思決定した事業戦略を遂行するためには、どのような機能別戦略をとるべきか。①商品企画・開発、②販売、の2つの観点から、それぞれ述べなさい。

<設問4>
ケーススタディでは、事例企業の活動から学び得た気づき・教訓・理論・モデルを、自分の仕事にあてはめて実践に役立てることが大切である。このケーススタディから「気づいたこと」「学んだこと」を考え、自分の仕事に「どのように役立てるか」を考えなさい。

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株式会社トレイク(TRAIC.Ltd)

http://www.traic.co.jp

斎田真一(かえる先生)

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