管理者のための「部下面談研修」

管理者のための「部下面談研修」を受講した皆さん、おつかれさまでした。

朝一番の、「やっぱりコミュニケーションが基本」という経営者のメッセージは、シンプルでしたが説得力がありました。

それに対して、「そんなの当たり前だよ」といわんばかりの表情。「いまさら学ぶものはない」という声ももれていました。

このことを私が指摘して、ほどよい緊張と苦笑いのなかで研修が始まりましたね(笑)

160328-01管理者のための部下面談研修

 

研修でも言いましたが、「コミュニケーション」という言葉は多くの人が使っていますが、その意味あいは曖昧で、人によってとらえ方が違います。

「コミュニケーションとは?」ときかれると、さまざまな観点からさまざまな答があることでしょう。

<例>

  • 関係者・・・・・・・1対1、1対複数など
  • 情報の中身・・・事実情報、感情情報など
  • 種類・・・・・・・・・雑談、対話、議論、説明、傾聴など
  • 方法・・・・・・・・・対面、電話、メールなど

この研修で大切にしたかったのは、コミュニケーションという言葉を思い浮かべたら、「誰と誰が、何の情報を、どのような種類・方法で、伝達・共有するのか」を、あらかじめ整理することです。そうすることで、部下面談がより適切に行われるからです。

■復習をかねて研修で私が感じたことを紹介します。
(1)目標管理制度の意義

ここでは、目標管理制度の意義について一緒に考えました。

多くの方は、「人事評価のため」という答えでしたね。

たしかに、目標管理制度と人事制度と一本化する組織が増えています。しかし、本来の意義は、組織の方向性と従業員の能力・志向を統合して納得感と主体性を高めたり、柔軟に対応できる現場力を高めることにあります。

目標管理制度において管理者が必要とするコミュニケーションは、主に次のとおりです。

  • 職場を取り巻く状況と職場の方向性を説明する
  • 管理者自身の想いを語る
  • 部下への期待を述べる
  • 部下の現状と目標を聞く(何を、いつまでに、どれくらい、どのように)
  • 部下の想い・考え・要望を聴く
  • 部下が主体的に考え行動するよう訊く(質問する)

ここまで解説すると、曖昧だったコミュニケーションの定義が具体的になってきましたね。これにより、部下面談において必要となるスキルも明らかになってきました。

(2)これまでの面談方法(実態把握)

ここでは、部下面談マニュアルも参考にしながら、これまでの部下面談の方法について受講者どうしで語りあってもらいました。

受講者の傾向は次のとおり。

  • 管理者の想いが強すぎて、部下の想いを受けいれられない
  • 管理者の方が知識・技能に優れるため、細かい点まで介入する
  • 部下の想いに圧倒されて、好きなようにやらせてしまう
  • 部下の専門性が高いために、突っ込んだ話ができない
  • 論理的思考が弱く、職場目標と部下目標の不整合を指摘できない
  • 目標のレベル差を指摘できない(部下Aは壮大な、部下Bは瑣末な目標)

いずれにしても、好ましい状態でありません。これに気づくことが大切でした。

(3)これからの面談方法(技術強化)

ここでは、これからの部下面談で必要な技術(下記)をパートごとに強化しました。

  1. 面談計画
  2. 話しやすい雰囲気づくり
  3. プラスのストローク
  4. 傾聴と承認
  5. 質問と動機づけ

特に重点を置いてトレーニングしたのは、「面談計画」と「質問」でした。

(3-1)面談計画

面談計画がないと自分の想いが先行してしまうことをミニ演習で味わいましたね。計画を立案するときのポイントは次のとおり。

  • この面談で部下はどうなってほしいか(面談の目的・目標)
  • そのためにどのような手順で面談を進めようか(面談の手順計画)
  • 自分が守るべき点はなにか(面談の規範)

また、面談計画を立案しすぎると罠にはまりやすいことも実感しましたね(笑)。計画どおりに進めようとすると機械的になってしまい、部下の話をきく余裕がなくなりました。

先に述べたとおり、目標管理制度は能力開発の一面をもっています。部下の話を受容・承認したり、うまく質問を繰り出し気づきを拡充するためには、心の余裕も必要です。

といことで、面談計画は次の格言?におさまるでしょう。

  • 部下面談の成否は計画にあり
  • 計画とは話しあいの手順をきちんと立てることだけにあらず
  • 部下を育てるための心の準備にあり
(3-2)質問

皆さんからの「難しい~」という声が印象的でした(笑)

そのとおりです。(管理者はそのつもりがなくても)まるで興味本位で質問しているようでした。部下からすると「何がききたいんだ…」と訝しく思うことでしょう。

部下の考えと気づきを拡充(広げる・深める)させて、部下に答えを言わせる質問は本当に難しいですね。

管理者としてせめて”体系的な質問”ができるようにしたいものです。

体系的な質問をするためには、管理者の「問題解決」と「論理的思考」のチカラが必要です。多くの方はここがボトルネックになっています。

問題解決のステップをわかっていれば・・・

  • 部下のあるべき状態
  • 部下の現在の状態
  • それらのギャップである問題
  • 解決すべき課題とその目標(値)
  • 問題を引き起こしている原因
  • 原因を解消する解決策

について、体系的に質問を繰り出すことができるでしょう。

論理的思考を備えていれば・・・

  • 因果関係(問題と原因、原因とさらなる原因)
  • 目的手段関係(課題と解決策、解決策のさらなる具体的)

について、考えを広げたり深めさせることができるでしょう。

「質問が難しい」と気づいたのは大きな一歩。あとは、問題解決力と論理的思考力をコツコツ高めていくのが得策です。

といっても無責任ですから(笑)、「超かんたん5つの質問」を解説しましたね。

  1. なに
  2. なぜ
  3. どのように
  4. ほかには
  5. どれ

問題はなに?/課題はなに?

原因はなぜ?/ほかに原因は?/どれが一番悪い?

どのように解決する?/ほかには?/どれから取り組む?

「これなら使える」といっていただき良かったです。テキストには複雑な質問も載せておきましたが、まずは「超かんたん5つの質問」から使ってみてください。

160328-02

(4)総合トレーニング

ここでは、本日の学習を活かした統合トレーニングを行いました。

部下の目標管理シートを持ちより、部下になりきって上司役(グループの他メンバー)と面談することで、部下の事情・考え・気持ちが伝わってきましたね。

ワーク後の声をまとめました。

  • 自分が説明しているとき、上司がシートに目を落として黙っていると不安
  • 新しい取り組みを提案したいのに、上司が一方的にしゃべって意気消沈した
  • 恐る恐る提案したが、上司がやわらかな表情できいてくれると不安が軽減した
  • 上司に「その提案いいね」「一緒にやってみよう」と言われたとき嬉しかった
  • 上司から体系的な質問をされると考えが整理される
  • 考えを整理できると「できそう」「やりたい」という気持ちになる
  • 「期待しているよ」「一緒にすすめよう!」という言葉に励まされた
  • 部下になりきってロールプレイングするのは大変
  • 上司役はもっとたいへん(笑)
  • 部下の気持ちがわかった

あとは実践あるのみ。皆さんの面談がメンバーと職場全体の成長につながりますように。

■皆さまのご活躍を応援しています。

 

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斎田真一(かえる先生)

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