問題発見・解決力の調査と考察(2)

■はじめに

私ども「株式会社トレイク」では、職場リーダーを対象に、問題発見・解決力を強化するトレーニング型の研修を実施しています。

このたび、問題発見・解決力に関する簡易診断ツールを開発して調査を行いましたので、その結果と考察について3回シリーズで紹介します。

*第1回はこちら(調査概要について)

第2回は、問題発見・解決力を、問題解決プロセスにのっとり4つの能力に分解したうえで、能力間の相互作用について、強み・弱みを分析します。

<4つの能力>

■総評

後述する調査結果から、「あるべき状態」や「現状」に照らして、「課題」を形成したり「解決策」を立案する力は高く、問題の解決に向けて「行動」する力や、行動した結果を「評価・改善する力」も高いといえます。

これは一見すると素晴らしいことです。しかし、あえて厳しい見方をすれば、次の状況に陥っており、比較的容易な問題解決ばかり取り組んでいる懸念もあります。

  • 何かしらの基準がすでに定められている(あるべき状態の創造が不足)
  • 基準を逸脱した状態が誰の目にも明らか(仮説にもとづく探究が不足)
  • 上から解決しろといわれた問題ばかり取り組む(課題形成の主体性欠如)
  • 従来どおりのやり方しか思いつかない(解決策の斬新さ不足)
  • 解決にむけてとにかく行動するばかり(評価・改善の不足)

一方、「解決すべき問題と放置する問題を選別する力」や「問題と原因を因果関係で構造化する力」は弱く、「問題や原因を明らかにするため情報を効率的に収集・分析する力」も弱いといえます。

このことから、次の状況に陥っており、「探索型問題解決」が弱いと考えられます。(実際に企業研修や大学授業でも、この傾向はよく見られます。)

  • その問題は本当に解決すべき問題か?を判断する経験は少ない
  • 複雑な問題に遭遇したとき、考えることを省略・停止してしまう
  • 論理的思考をベースに因果関係を粘り強く構築することが苦手
  • 本質的原因を追究するための情報収集・分析力も非効率的

さらに言えば、今は問題がなくても、危機意識をもって意図的に将来のあるべき姿を設定し、現状とのギャップを埋めていくという「創造型問題解決」は、発展途上であると考えられます。

■調査結果

上記の総評の背景となる調査結果について紹介します。

下図は、4つの能力における相互作用(A~F)について、全体・高群・低群の平均点[5点満点]を表しています。

・上段・・・全体平均(N=102名)
・中段・・・高群平均(上位13名)
・下段・・・低群平均(上位19名)

■データからみられる強み

全体・高群・低群ともに、B・E・Fが高くなっています。

このことから、「あるべき状態設定力と現状把握力」「課題形成力と解決策立案力」「問題解決に向けた行動力と評価・改善力」の3つの能力を相互に作用させる問題解決力が、相対的に強いといえます。

具体的には、次の設問の得点が高めでした。

*( )内の左は設問番号、右は全体平均[5点満点]

  • 解決策を選択するとき、実行可能性(本当に実行できる解決策なのか)を考えて選んでいる(B-2 3.88点)
  • 問題解決行動をとっているとき、形成した課題を達成しようと意識して行動している(B-4 3.64点)
  • 形成した課題は、あるべき状態と連鎖している(E-1 3.63点)
  • あるべき状態が大きいとき(次元が高い、範囲が広い等)、課題はいくつもありえることを意識している(E-2 3.64点)
  • 問題解決行動をとる前に、あるべき状態を確認してから行動に移す(F-1 3.36点)
  • 問題解決行動を終えたとき、あるべき状態に到達したかを確認している(F-5 3.34点)

■データからみられる弱み

全体・高群・低群ともに、A・Dが低くなっています。

このことから、「問題発見力と原因分析力」「あるべき状態設定力と現状把握力」「課題形成力と解決策立案力」の3つの能力を相互に作用させる問題解決力が、相対的に弱いといえます。

具体的には、次の設問の得点が低めでした。

  • 問題を発見したとき、「解決するか・しないか」について考えている(A-2 2.61)
  • 問題や原因を組み合わせて構造化したうえで、課題を設定している(A-3 2.36)
  • 解決策を立案したあと、その解決策は本当に問題や原因の解消につながるのかをチェックしている(A-5 2.68)
  • 問題を発見したとき、思い込みを排除して、客観的な事象やデータなどを把握している(D-2 2.54)
  • 問題や原因に関する情報をさらに集めるとき、やみくもに集めるのではなく、効率的に集めている(D-3 2.68)
  • 現在は問題が無くても、将来にあるべき状態を設定し、そのギャップである問題を意図的に創っている(D-5 2.49)

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株式会社トレイク(TRAIC.Ltd)

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斎田真一(かえる先生)

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